【怪談祭り2020】みなさんからの投稿~「あれは、大婆ちゃんだ!」~(8月16日)[No.053]
「あれは、大婆ちゃんだ!」
投稿者:かぼちゃっちゃさん
投稿日:8月15日(土)
99歳10ケ月の主人の祖母が、ある日突然亡くなった時のことです。
義祖母は、その日も普通に食事を済ませて、いつも通り自分で風呂に入り、頭もしっかりしていて、とても100歳になろうとしているとは思えないくらい元気な人でした。
その日は朝になっても起きてこない義祖母を起こしに部屋に行くと、布団の中で義祖母は亡くなっていました。突然のことで、家族みんな驚いて、慌ただしく葬儀を終えました。
そして義祖母が亡くなって、1週間くらい経った頃…。義父が突然、おかしくなってしまったんです。
義父は、普段からほとんど日常会話をせず、たまに口を開けば「ばかやろー」と、文句ばかり言う人で、普段それが嫌でたまらない主人も私も、同居ながらほとんど義母を通してしかコミュニケーションが取れない人なのですが、突然「おはよー!」と挨拶してきたんです。
そこから、お墓のこと、相続のこと、家のこと、次から次から心配事を口にして相談してきました。こんなに喋る義父は見たことありません。
義母は堂々巡りするこの相談を、丁寧に一晩中答え続けました。
2日目、義父は「右の耳がジージーと耳鳴りしてうるさい」と言いだしました。
そして、今まで毎日唱えていたお経が思い出せないと言い出し、仏壇の前に座っても、木魚を叩くだけで、お参りをあきらめました。
その日もまだ同じように心配事をずっと言い続け、「だよねー」なんて気弱な喋り方。今までの義父とは全然ちがいます。
3日目、一向に心配が止まらない義父に、普段けむたがって全く話をしなかった主人がとうとうキレました。
「頼むから普通に戻ってくれ!俺がお墓も立て直す、こじれている相続も済ませる。だから元に戻ってくれ!」
そしたら、義父は「そうか、それならいいね」と納得したように、そのおかしな行動は無くなり、翌日から、いつもの挨拶をしない、喋らない、無口な義父にもどりました。
お経も思い出したらしく、右耳が耳鳴りが酷いと言っていたことも言わなくなりました。
あれはなんだったんだろう…。そう考えて、ひと月ほど経った頃、私の夢に亡くなった義祖母がでてきました。
「突然死んじゃったからびっくりしちゃってさー」
いつものように可愛らしい義祖母の屈託のない笑顔の夢でした。私は、そうだよねー、おばあちゃんもびっくりしたんだろうなって思って納得したんですが、ふと、気づきました。
義祖母、「右耳が耳鳴りがして、うるさいんだ」といつも言っていたこと。お経が読めないから、「木魚を叩くだけしか出来ないんだ」と言っていたこと。
そして、義父も同じ事をあの時言っていたー女性のような言葉になっていたり、「そんなもの、ほかっておけ!」と言って、全く気にしていなかった亡くなった義祖父から義父への相続問題を突然あの時だけあんなに気にして悩んで…。
あれは、義祖母だ。大婆ちゃんだ!大婆ちゃんが、言いたいこと言えずに亡くなったので、息子である義父の身体借りて出てきたんだ。
家族もみんな、納得しました。あれから何年にもなりますが、義父はいつもの無口な義父のままです。
[この怪談は…ここまで……です…]