【怪談祭り2025】みなさんからの投稿~来客~「私にしか見えなかったのがお気の毒です」~(9月11日)[No.010]
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来客
投稿者:海さん
投稿日:9月11日(木)
数年前の話です。
出社すると、会長の後ろに紺色のスーツを身に着け、銀縁眼鏡をかけた方が立っていました。
手にはダブルクリップでまとめた書類の束を持っています。
会釈すると、その方もお辞儀を返してくれました。
会長の来客は玉石混交で、色々な意味で幅が広かったのですが、その方は「玉」に属する方に見えたため、お茶を持っていくことにしました。
お茶を運んだ時、部屋には会長ひとりしかいませんでした。
「あれ?お客様はどちらに?」
会長に尋ねたところ、「そんな人は来ていないよ」と言われました。
他の社員にも尋ねましたが、誰もその人を見ていませんでした。
私は激しく動揺し、混乱しました。はっきりと見えたので、まさかあの人が幽霊だとは思わなかったのです。
しばらく考えて(あの人は多分取引先の誰かで、幽霊になって挨拶に来るくらいだから、うちと付き合いの深い方だったんだろう。そうであれば、恐らく今日明日中に訃報のFAXが届くだろう・・・)
そう仮説を立て、落ち着くことにしました。
そして翌朝、訃報のFAXが届いていました。
その方は昔、会社の業績拡大に力を貸して下さり、古参社員しか顔を知らない方だと伺いました。
恐らく会長に会いに来られたのだろうに、私にしか見えなかったのがお気の毒です。
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[この怪談は…ここまで……です…]