【怪談祭り2022】みなさんからの投稿～怪談ハシモト～「その場にいた全員が…」～(7月12日)[No.019]

怪談というわけではありませんが、不思議な話だと思うので投稿します。

ずいぶん前の話ですが、私が高校生の時に、或る先生から、授業中に聞いた体験談です。

当時、その先生が勤務していた高校では、喫煙等が見つかった生徒が、罰則として、放課後に、校舎の屋上やトイレ、体育館裏などをバケツを持って歩き、煙草の吸い殻を拾わされていたそうです。

ある日の放課後、宿直室にいた先生のところに、その罰則である「モク拾い」をしていた生徒が、真っ青な顔をして駆け込んで来ました。

｢先生！大変です！プールに！」

体育館裏の通路を、煙草の吸い殻を拾いながら歩いている時、ふと、横のプールを見ると水面に何か浮かんでいた、とのことです。

よく見ようと近づいて背伸びをしてみると、どうやら、それは人間のようだ、と。

それを聞いて。先生もプールに駆け付けました。

オレンジ色の夕陽に染まるプールに浮いているのは、確かに人の体のようでした。

先生と生徒、二人で声をかけあって、プールに飛び込みました。引き上げてみると、それは、小学生くらいの男の子で、もう息はしていなかったそうです。

先生がすぐに通報して、白い原付バイクの警察官がやって来ました。

警官は遺体を確認すると、近隣の小学校に連絡して、まだ自宅に戻らない男の子のいる家庭を探したそうです。

しばらくして、心当たりのあるという両親が駆けつけて来ました。遺体の少年はその家の子供でした。

既に暗くなったプールサイドで、最初に原付バイクで来た制服の警官の後から別のパトカーで来ていた私服の警官が事情聴取のために「さて、では、ハシモトさん」と呼びかけると……

｢はい！」
その場にいた全員が、顔を上げて返事をしたそうです。

「え？」
私服の警官は驚きましたが、他の人たちも顔を見合わせて驚いています。

亡くなった少年は、ハシモト君、といいました。当然両親もハシモトさんです。

発見したモク拾いの生徒もハシモトくん。さらに最初に駆け付けた警察官もハシモト巡査。

そして、この話を私たちにしてくれた、その日、宿直だった先生の名前もハシモト。

関係者全員が、｢ハシモト」という、同じ苗字だったのです。

この話には特に心霊的な要素というものはないかも知れません。「こんなの怪談じゃない！」という皆さん、ごめんなさい。ですが、私たちは、この話を「怪談ハシモト」として、後輩たちに語り継いで来たのです。