【怪談祭り2022】みなさんからの投稿~長野県の松代大本営にて~「平和の尊さを忘れるとばちが当たる」~(7月1日)[No.004]
長野県の松代大本営にて
投稿者:花かごさん
投稿日:6月29日(水)
もう20年以上前の事。
長野県の松代大本営に友人と2人で行きました。私は微弱霊感体で、友人は私より霊感があります。
最初は他のビジターもいたのに、いつの間にか私達だけに。何だかいやな感じがしてきました。
途中で堀りかけの分岐点が金網で囲われて塞がれていました。それを見た友人はボソっと…
「もし塞がれてなくてもこの先には行けない」
ますます気味が悪くなってきました。
中は半闇で暗く、物音は私達が歩く足音だけになり、2人とも無言になりました。そして、やっと行き止まりの終点に。
鑿(のみ)跡が粗く残る岩壁を見て、私はやっとこれで戻れるんだとホッとしました。友人と目を見かわして頷き、振り向きました。
でも、壁に背中を向けたその瞬間、背後の真っ暗な岩壁一面に無数の目が光って、私達を見ている…そう感じました。
絶対に振り返ってはならない。直感しました。
私は無言で足を早めました。本当は走り出したかった。でも、半闇で足元が見えません。転んだら死ぬ。必死で早く歩く私の背後で友人はまたボソッと言うのです。
「今振り向いたら、とても怖いものを見る気がする」
私はさらに怖くなってまた足を早めました。このまま、憑り殺されるかもしれない。
振り返ってはいけないし、立ち止まってもいけない。昔の民話で、怪異に遭遇した時には足を止めてはいけない、という話を思い出しながら、私は無言のまま必死に足を動かしました。
突然、新しく来た家族連れの明るい声が聞こえて来ました。
その瞬間にスゥーっと空気が軽くなって、背後の殺気が無くなったのです。
松代大本営の建設は戦時下に極秘に進められた工事でした。硬い岩盤を掘っていたのは外国から連行されてきた労働者であり、落盤事故で亡くなった方も少なからずあったそうです。
あそこから故郷に帰れない魂の成仏を、この機会に心からお祈り申し上げます。観音さま、あの方々が海の向こうのふるさとにどうか帰れますようにお助けください。
南無観世音菩薩 南無観世音菩薩 南無観世音菩薩
終戦から長い時間が過ぎました。ウクライナ紛争は他国の話だと思ってはいけないのかもしれません。
平和の尊さを忘れるとばちが当たると改めて思いました。
[この怪談は…ここまで……です…]